SF小説 フィナーレ・ラプソディアからの挿話

以下、本文


その挿話というのは、

 ある時を境に、あらゆる物質がこの世から1つずつ消えていく現象が発生し始め、

終いには「次元」という観念すら消えてしまう内容だった。

ラストシーンでは、

どうしても逃れられない宿命を背負った二人の主人公だけが残され、

いよいよ対峙しなければならない状況へと陥った。

文字通り「食うか食われるか」となった極限の場面では、

これまた

文字通り「命を懸けて」全力で争う醜い姑息な顛末へと化し、

かつての栄光や友情などの輝かしい軌跡に一切関係なく、

まるで何もありませんでしたよ宜しく薄っぺらいヒドイ代物であり、

その2つの極小物は高性能特殊顕微鏡で拡大しなければ、

ゴマ、ゴミ、カス、チリみたいな極点が、

ピョコピョコしていることすら、わからない状況であった。

ちょいと俯瞰してみれば何も一切発生していないムードも漂っていた。

そして、ついには、それを見守っていた語り手も消えてしまった。

最終闘争は、

ふたり以外ほかの誰も知りえなくなった次元で思う存分永遠に繰り広げられ、

泥仕合なのか、もはや元々なんだったのか、

それさえも忘我の果てに諦念していった。

なぜならば、とうに闘いの概念そのもの自体も消失してしまっていたからだ。

(完)

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